Revive together—きっとラグビーは復興する第3回 竹本佳正さん | ラグビージャパン365

Revive together—きっとラグビーは復興する第3回 竹本佳正さん

2013/04/24

構成●編集部


 

「大きい人、小さい人、太ってる人、細い人、あそこにはエーストライカーも4番バッターもいない。ボールを持ってる奴が主役なんだ」

これは、月刊モーニング・ツーに連載中のラグビー漫画『ALL OUT!!』に出てくる台詞だ。まさにラグビーという競技が持つ魅力をストレートに伝えた言葉――今回、Revive Togetherきっとラグビーは復興する、3回目に登場いただくのは、ラグビー漫画『ALL OUT!!』の編集者である竹本佳正氏。

 

「ALL OUT!!」が生まれたその瞬間とは!?

竹本氏は高校と大学で楕円球を追った。島根県の江の川(現石見智翠館)高校では梅本勝監督(現尾道高校監督)の下キャプテンとして花園ベスト16、早稲田大学では清宮監督氏の薫陶を受け赤黒ジャージにも袖を通した“日本一ラグビーに精通した編集者”と言えよう。トップリーガーでは、SO大田尾竜彦選手(ヤマハ発動機)やCTB霜村誠一選手(パナソニック)、日本代表主将を務める廣瀬俊明選手(東芝)などと同期にあたる。

そんな経歴の竹本氏、『ALL OUT!!』の連載が決定するまでのいきさつを語ってくれた。

「筆者の雨瀬シオリさんとは、彼女がモーニングの新人賞に投稿したことがきっかけでお付き合いが始まりました。初めてお会いした時に「どんな漫画が描きたいですか」と尋ねた時、「男性が主人公の熱い漫画が描きたい」とは言っていたものの、競技経験もないラグビー漫画を描こうという気はありませんでした。ですが、僕は雨瀬さんがラグビー漫画を描いたら面白いだろうなあと感じたので、打ち合わせの前後によく“ラグビーのおもしろ話”や“ラグビーの熱い話”といった小話をいろいろとしていたんです(笑)。

半年くらい経って、雨瀬さんから「竹本さんがいろいろラグビーの事を話すので興味を持ちました。ネーム(下書き)を描いたので読んでください」という連絡が入りました。そこから何度も打ち合わせを重ね、現在の原型となるストーリーができあがっていきました。

できあがったものを編集長に見せたところ、連載1話目の決め台詞となっている「ラグビーにはエースストライカーも4番バッターもいない」という部分を読んだ時に「ラグビーにはそんな世界があるのか。知らない世界へ引き込まれた」という反応をいただき、連載が決まったんです。それからは雨瀬さんと高校の取材をし、トップリーグの試合は毎週のように観に行って年末の花園にも行きました。僕も「仕事だ!」と大手を振ってラグビー場に行けるようになりましたね(笑)。」

 

ラグビーを知らない方でも楽しめるように・・・

雨瀬さんが描いたという竹本氏の似顔絵。

雨瀬さんが描いたという竹本氏の似顔絵。

連載が決まってみると、竹本氏にはラグビー復興のために多くの関係者からエールが送られたそう。

「これでラグビー盛り上がらなかったら竹本の責任だ!と、諸先輩方から熱いプレッシャーをいただいています(笑)。スポーツ漫画は数多くありますが、ラグビー漫画はあまり目にしたことがないかと思います。ですので、読者の皆さんには、まずラグビーという新鮮な題材を楽しんでいただきたいですね。そして、ラグビーという競技が持つ肉体的接触の激しさや選手どうしの絆、高校生ならではの青春群像劇なども楽しんでいただけると嬉しいです。

漫画というのはとても入りやすいものだと思うので、たとえばラグビーに興味のなかった高校生が『ALL OUT!!』を読んで、自分の高校にあるラグビー部の試合を応援に行くみたいなことが起きてくれればいいですよね」

自身もバリバリのラガーだった“日本一ラグビーに詳しい編集者”といってもおかしくない竹本氏のこだわりとは――。

「ラグビーを知らない方でも楽しめるように、難しい専門用語やマニアックな内容にならないよう気をつけています。単純にスポーツ漫画・青春漫画として楽しんでもらえるということが一番です。ですが、経験者の方が「こんなのありえないよ」と感じて興味を失わないように、キャッチの仕方やタックルの角度、セットプレーの部分などは細かくチェックしています。結構プレッシャーだったりしますけど(笑)」

 

竹本氏から見た、エディ・ジャパンはーー

エディ・ジャパン、現在の日本代表は竹本氏からはどう見えるのだろう。

「期待感がすごくあります。アタッキングラグビーをやるためにフィットネス・ストレングスを鍛えるという思想がはっきりしているので。その証拠に選手の体は明らかに変わってきていて、廣瀬選手(俊朗・日本代表主将)なんかも以前よりキレてるなあと思います。

結果というのは別の問題だと思うんです。やってみたら結果が出ましたという結果オーライの方法は10回やって7回くらい勝てるようなチームであればそれでいいと思いますが、日本代表のように(ワールドカップ)予選リーグも勝てないチームには、やることが決まっていて、それに合う選手がキャリアに関係なく選ばれるというのはあるべき姿だと思います。

それに大学生よりも練習していますよね(笑)。3部練習とは4部練習とか。そこまでできるというのは、“ここで勝つ”という思想がチームにあるからなんですよね。そういう意味で今の代表にはすごく期待しています」

昨年の11月に連載がスタートして、ついに単行本1巻が発売された。

「まずは『ALL OUT!!』を大ヒットさせて、ラグビーの楽しさをひとりでも多くの方に伝えたいと思います。ラグビーに興味を持ってもらうため、細かいところでは雑誌の編集後記にちょくちょくラグビーに関することを書いてるんです。例えば、日本代表のSH田中史朗選手(ハイランダーズ)がスーパーラグビーの選手となったことを書きました。「これはすごいことなんです!」と。直近では、「誰も知らない!?ラグビーワールドカップは2019年に日本で開催される!」ということを書きました(笑)」

『ALL OUT!!』を読んだ子供たちがラグビーを始め、2019年のワールドカップを見て、日本代表を夢見て練習を重ね、日本代表としてピッチに登場する――そんな瞬間もそう遠くはないはずだ。ラグビーを知らない人でも楽しめるストーリー、ラグビーを知っている人でも満足できるストーリー、ぜひ一度読んでみていただきたい。

ラグビーが復興するために必要なこと、それはラグビーというスポーツを知ってもらうことだろう。きっかけが「漫画」というのは非常に大きなパワーをもっているに違いない。残すは『ALL OUT!!』がきっかけで、ラグビーをはじめた子供達が思う存分練習ができる環境や、スタジアムにやってきた人たちをラグビーファンにするような演出が整備できるのかどうか――運営側に求められている課題といえるだろう。

 


竹本佳正(たけもと よしまさ)
1981年12月3日生まれ、広島県尾道市出身。月刊モーニング・ツーでラグビー漫画『ALL OUT!!』の編集を務める。中学ではバスケットボール部だったが、地元が同じだった縁で梅本勝監督が率いる江の川高校(現石見智翠館)で本格的にラグビーを始める。主将&第3列として花園ベスト16出場に貢献。その後、早稲田大に進学し、HOとしてプレーした。現在もクラブチームでプレーを続ける。


 

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